三人姉妹の次女からの相談で、グループホームに入居していた母親が亡くなり、その相続で長女と揉めているとのことであった。
グループホーム入居の7年後の他界で、長女がその間の母親の財産管理を担当していた。
亡くなった時の母親の遺産は預金のみで、預金残高は合計300万円程度であった。
次女は弁護士に相談する前に母親の預金の取引履歴を取り寄せており、母親がグループホームに入居した当時の預金残高が1000万円程度あったことを把握した。

母親にかかる入居費を含む生活費は、母親の年金額で賄える計算であり、差額である700万円もの大金を母親のために費消する可能性は低かった。
次女から相談されて、預金の取引履歴などの資料をみる限り、次女の説明は確からしいと考えて弁護士として受任した。
最初に、長女に対して内容証明郵便による通知書を発送して700万円の使途の説明を求めたところ、長女は半分の350万円程度の使途しか説明できず、その説明にも信用できない内容が含まれていた。

そのため、話し合いによる解決は諦め、遺産分割調停を申し立てた。三女は中立的な立場であったが、相続人全員が当事者にならなければ調停手続きを始めることができないため、次女が申立人、長女と三女が相手方となった。
第1回の調停期日において、長女は、700万円についての使途を説明する詳細な書面を提出した。

第2回の調停期日において、次女の代理人として、内容のうちの不合理なところを指摘した上で、使途説明を求めた700万円のうち、200万円分を分割の対象の遺産に加えて500万円を3等分にするのであれば遺産分割に応じることができるとの解決に向けた提案を行った。
第3回の調停期日の時には長女は弁護士を代理人に付けていたが、その弁護士に説得されて、こちらの調停案を受け入れると回答した。
そのため、当初の遺産を前提とすれば1人あたり100万円の取り分となるところを、170万円弱の取り分に増額させることに成功した。